2021/04/23
実録・読み物

眼鏡の似合う理系のお姉さんと薬学論文の話をしたら振られた話【恋愛ノンフィクションコンテスト受賞作】

眼鏡の似合う理系のお姉さんと薬学論文の話をしたら振られた話

NOVIOは3月2日〜23日、WEB小説サイト・カクヨムにて「男性視点の恋愛ノンフィクションコンテスト 〜恋活・婚活体験談募集〜」を開催しました。

今回は、その中から優秀賞「眼鏡の似合う理系のお姉さんと薬学論文の話をしたら振られた話(作・海野しぃる)」を掲載します。

作品概要

現実で眼鏡のお姉さんに冷たくされても悲しくなるだけで興奮はしません / 海野しぃる


無事に書籍化の印税が振り込まれてからしばらく経ち、そういえば大学生なのに恋愛とかちゃんとしてなかったなと思い至ったので、手元に残ったお金で身なりを整え街コンに挑戦をした時の話です。

カクヨムレビュー

★★★ Excellent!!!

はりきらないのは難しい 秋永真琴
どうして人間の心は「はりきる人が疎ましい」というむごい感情を発生させてしまうのでしょうね……だって、好かれたい相手に対してはりきらないのは難しい。読んでいて文字が滲みます。しぃる先生に幸あれ

★★★ Excellent!!!

心にぐっと刺さりました 澄ノ字 蒼
とても勉強になりました。突然レビューしてしまって申し訳ありません。このエッセイおすすめです。エッセイを読んで心にずきずきと痛むものがありましたがそれ以上に学ぶことがあり面白かったです。それでは失礼いたします。

★★★ Excellent!!!

よき教訓! @suicide-bomber
好意を寄せる対象に対して前のめりになり、空回りしがちと認識している方には是非一読する価値があります。恋愛において好き好んで失敗したい人はいないと思いますが、経験を前向きにとらえて次に活かす為の分析には好感が持てます。


優秀賞受賞:眼鏡の似合う理系のお姉さんと薬学論文の話をしたら振られた話


恋カツをして人生が分かりました!


大学生の頃に街コンに参加した時の話です。書籍化したのでポーンと印税が入ってきて、とりあえず親孝行に使った後はどうしたものかな~と悩んでいました。折角の大学生活なのに書籍化するまでは色恋沙汰は断つつもりで頑張っていて寂しい大学生活を送っていた事に気が付き、思い切って服を買い髪を整えいわゆる恋活に参加しようと思った訳です。ひとまず目標を達成したので彼女欲しくなったんですよ。

 最初はうまくいくわけないしお金をドブに捨てるくらいのつもりだったのですが、やってみるとこれが意外と面白い。勿論スタイルと顔の良い人々から売れていくのですが、最低限清潔感を保って笑顔で相手の会話に対して傾聴を行い、共感の意思を示していると案外連絡先の交換や一対一のデートまではこぎつけるものです。これは大学で患者さん相手に取るようなコミュニケーションの方法を真似してみたんですが、少なくとも初対面から一歩踏み込むまではこの方法論でいけるみたいですね。現代人は病んでいるのかもしれません。



 さてそんなこんなで同じ大学で5年ほど先輩の年上のお姉さんとデートするようになり、二人でデートに行き、食事をしたり、お酒を飲んだり、動物園とか遊びに行ったりとジワジワ距離を詰めていた時のお話。

 最初から気にはなっていたのですが、彼女はかなり少食な方だったんですよね。私が成人男性かつ大柄なので相対的に少なく見えるだけだろと思っていたのですが、やはり明らかに少ない。あとかなりゆっくりめに食べるタイプだったんですね。

 その日も彼女のペースに合わせてゆっくり食べていたんですが、急に彼女の方が「あんまり食べられないんです」という話を切り出してきた。まあ気づいてはいたもののそこまで気にしてもいなかったので「体質じゃないっすか~」って答えたところ、それがそのものずばり体質的なものだったんですね。個人の特定を避けるために詳しい病名等は伏せますが、その話をきっかけにわりと彼女の事情の込み入ったところまで話すようになって「信頼されてしまった……頑張らなきゃ……」って思ったんですよ。だって男心として弱みを見せられたら燃えませんか? 頼られているんだなって思いませんか?



 頑張ったんですよ。やりました。必死に。でもその結果が失恋。

 さあ何が起きたかについて話していきましょう。

 

 当時、大学では論文が読み放題。普段は不真面目な学生にもかかわらず、うっかりやる気なんて出したものだからさあ大変。彼女の身体で起きている問題について非常に熱心に調べてどういうことを気遣えば良いのかどういう治療が一般的なのか全部全部調べちゃった訳ですね。はい、お話なんて書いているだけあって調べ物大好きなんですよ僕。正直薬学にはあまり興味が無いのですが、状況が状況なので張り切った。張り切りすぎた。

 結果、どうなったかと言うと次回デートでカバンに資料を入れて聞かれてもない話をしちゃったんですよね。そりゃうっせぇわ。いくらその前から近い分野の研究してた同士だからって個人の事情にあまり勢い良く踏み込むべきじゃありませんよ。まあ当然の結果として振られますよね。バッサリいかれましたが、ちょっと思い出すと胸が痛いのでこの話はやめましょうか。

 

 さて、僕の振られザマよりも大事な話をしましょう。僕は今そのお姉さんの年齢に近づいてきて、分かったことがもう一つあります。社会はクソ、労働はクソということです。いやー職場ってきついですよね。それを思えば彼女が話を聞いてくれる年下の男の子とのデートに乗り気になった理由も分かります。仕事の話もある程度理解できるし、細かく愚痴れるってのはなかなか希少価値でした。大学も同じだから共通の話題もあるし、雰囲気は穏やかで服装も地味めだったので、やっぱりそういう点でもクソみたいな労働の日々における癒やしとしての役割を期待されていたわけですよ。

 今になって思えば役割を破壊したのは僕だったって訳です。

 この話から得た女性とのお付き合いの教訓として

・なぜ求められているのか考える

・求められた理由を手放さない

・何を求められているのか常に分析する

 という三つがありました。

 なんと驚くべきことにweb小説によく似ていますね。こういう苦い経験もまた一つの芸の肥やしということで前向きに生きていきたいものです。

 なお恋愛ノンフィクションを書くというお題なので、この三つを元に自分ができることを考えてみると

・自分がなぜ付き合いたいのか考える

・殊更言わなくて良いけど付き合っている理由を自分の中でハッキリさせておく

・自分がしてほしいこととしてほしくないことは素直に相手に伝える

 って感じになります。まあやっぱ何をしたいかって言える人間の方が人付き合いはうまくいきますよね。恋愛以外の全てに言える筈ですよこれは。

 

 最後にもう一度だけ労働はきついということを伝えて終わりたいのですがこれでは恋愛ものになりませんね。彼女が居た時は好きな部署でのびのび仕事していたこともあって、労働も無限におかわりしちゃいそうでした。皆さんも辛い時は色恋沙汰にうつつを抜かしてみませんか? 案外楽しい経験になるかもしれませんよ?



 今は異動先の部署がキツイので婚活レポート編もそのうち書く予定です。楽しみにしていてください。人生について更に苦い真実を分かっていきたいと思うので、期待しててくださいね!


編集部より選評

読んでいて心の古傷をえぐられる感覚がありました。誰でも一度は「好きな人のために過剰に頑張って、空回ってしまう」という経験をしたことがあるのではないでしょうか。

作者の方は、そんな誰もが共感できるエピソードを、高い文章力で赤裸々に書き上げ、さらには我々読者への教訓へと落とし込んでくださっています。

面白い読み物であると同時に、恋活・婚活男性への有益な情報でもあり、NOVIOの読者の方に是非読んでいただきたいと思ったため、優秀賞に選定させていただきました。

カクヨム
https://kakuyomu.jp/

男性視点の恋愛ノンフィクションコンテスト 〜恋活・婚活体験談募集〜
https://kakuyomu.jp/user_events/16816452218889540575
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